夏の再エネを鉄粉に蓄えて冬へ 欧州のエネルギー費用を比べた試算
ニュースの要点
ドイツの研究機関EWIが、鉄粉へエネルギーを蓄え、冬の発電や暖房に使う仕組みを試算しました。既存の石炭火力を改修する条件で、欧州の電力・熱供給にかかる費用を比較しています。

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ドイツのケルン大学エネルギー経済研究所(EWI)は11月3日、鉄粉を使う場合と使わない場合のエネルギー供給費用を比べた報告書を公表しました。ダルムシュタット工科大学とDESERTEC財団の委託を受け、2045年までの欧州の電力、水素、地域暖房を計算モデルで検討しています。
鉄粉を燃やすと、酸素との反応で熱が生まれ、酸化鉄が残ります。再生可能エネルギーで作った水素などを使って酸化鉄から酸素を取り除けば、鉄へ戻せます。夏の太陽光や風力のエネルギーを鉄粉に蓄え、冬に発電や暖房へ回すという考え方です。
計算では、鉄粉を使える場合の年間システム費用が、使えない場合より2035年に約150億ユーロ、2040年と2045年に約180億ユーロ低くなりました。対象地域はEUの多くの国に英国、スイス、ノルウェーを加えた範囲です。設備の建設や運転、燃料、輸送などを含む費用を比較しています。
結果は、既存の石炭火力を鉄粉向けに改修でき、計画に沿って再生可能エネルギーが増えることなどを前提とする試算です。研究チームは、鉄粉を使う設備などの費用が50%高い場合や、太陽光・風力の設備が25%少ない場合、より寒い年の条件も調べています。
このニュースをやさしく解説
要点
鉄粉を使って夏のエネルギーを冬へ持ち越せると、欧州の電力や暖房の費用はどう変わるか。ドイツの研究機関EWIが2045年までを計算した研究です。鉄粉を使う設備を導入できる場合と、導入しない場合を比較しました。
鉄を燃やして熱を取り出し、酸化鉄を鉄へ戻す
鉄粉が酸素と反応して燃えると、熱が出て酸化鉄が残ります。この熱を発電や暖房に使うのが、研究で検討した方法です。残った酸化鉄は再生可能エネルギーで作った水素などを使って酸素を取り除き、再び鉄へ戻します。鉄を戻す段階でエネルギーを使い、燃やす段階で熱として取り出す仕組みです。鉄粉を繰り返し使いながら、エネルギーを必要な時期へ移すことを考えています。
夏に蓄え、冬の発電や暖房へ回す
この仕組みで検討した使い方の一つが、夏の太陽光や風力のエネルギーを蓄え、冬に取り出す方法です。EWIは欧州の多くの国と英国、スイス、ノルウェーを含む地域について、2045年までの電力、水素、地域暖房を計算しました。地域暖房は、まとめてつくった熱を地域の建物へ届ける仕組みです。鉄粉を使える場合と使えない場合で、必要な設備や運転の組み合わせを比べています。
比べたのは、エネルギーを供給する側全体の費用
計算上、鉄粉を使える場合の年間費用は、使えない場合より2035年に約150億ユーロ、2040年と2045年に約180億ユーロ低くなりました。対象は設備の建設や運転、燃料、輸送などを含む供給側全体の費用です。既存の石炭火力を改修して鉄粉に対応できることや、計画に沿って再生可能エネルギーの設備が増えることなどを前提に、二つの場合を比較した結果です。
設備が高い場合や、寒い年も計算する
将来の条件が変わった場合も調べています。鉄粉を使う設備などの費用が50%高い条件、太陽光・風力の設備が25%少ない条件、より寒い年の条件です。こうした比較で、どの前提が結果を左右するかを検討します。鉄粉の利用を含む欧州のエネルギー供給を、設備や燃料の費用から評価した研究です。
この記事に出てくる用語を確認する
- 酸化鉄
- 鉄と酸素が結び付いた物質です。今回検討した仕組みでは鉄粉を燃やした後に残り、酸素を取り除いて鉄へ戻します。
- 季節ごとのエネルギー貯蔵
- ある季節につくったエネルギーを蓄え、別の季節に使う考え方です。今回は夏のエネルギーを冬の発電や暖房へ回す方法を検討しています。
本誌の考察
夏の日差しを、冬の町の暖房に回す
この試算が描くのは、エネルギーを季節をまたいで使う仕組みです。夏につくったエネルギーを鉄粉に蓄え、冬に発電や熱の供給へ回せれば、地域の暖房を準備する方法が増えます。例えば、地域暖房を運営する事業者が冬の需要を見込み、夏のうちに鉄粉を用意します。寒い時期にはその鉄粉から得た熱を住宅へ届けます。住民が家の暖房をいつもどおり使いながら、離れた場所で夏につくられたエネルギーを受け取る暮らしです。必要な設備と鉄を再生する仕組みが整えば、こうした季節をまたぐ供給を町全体で考えられるでしょう。
もう一つ注目したいのは、既存の石炭火力を改修できるかどうかが費用を左右する点です。改修を実際に進められ、鉄粉の調達と再生を継続できれば、使ってきた発電所を新しい供給方法へ生かす道が広がるかもしれません。地域の事業者は建物や設備をどこまで使い続け、燃料の運搬や点検をどう変えるかを検討します。その選択が供給にかかる費用を変え、将来の料金や地域への投資を考える材料になります。家庭の快適さを支える仕組みを、燃料の作り方から発電所の使い方までつなげて選ぶ未来が見えてきます。
参考資料
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